熊蜂の飛行とは?【原曲・作曲家・背景】
リムスキー=コルサコフ作曲、オペラ「サルタン皇帝の物語」より
「熊蜂の飛行(Flight of the Bumblebee)」は、ロシアの作曲家ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844〜1908)が手がけた、とても有名なクラシック曲なんです。
もともとは、1900年に初演されたオペラ《サルタン皇帝の物語》の中で使われたもので、第3幕の間奏曲として登場しました。
この場面では、王子が魔法で熊蜂の姿に変わり、空を飛び回るシーンが描かれていて、その動きを音楽で表現しているんですよ。
原曲はフルートやクラリネット、弦楽器などを使ったオーケストラの曲で、すばやく動くメロディが「本当に蜂が飛んでるみたい!」と話題に。
その後、ピアノやバイオリンなどいろいろな楽器向けにアレンジされて、今では“超絶技巧曲”の代表として世界中で演奏されるようになったんです。
なぜ超絶技巧曲として人気なのか?(テンポ・音数・転調)
「熊蜂の飛行」がとくに難しいとされる理由は、なんといってもそのスピード感と音の多さなんです。
テンポはかなり速くて、♩=160〜200くらいが一般的。さらに、8分音符や16分音符がず〜っと続くので、ミスなく弾ききるのは本当に大変。
一度弾きはじめたら、息つく暇もないくらい、ずっと指が動きっぱなしという感じです。
しかも、途中でどんどん調が変わる「転調」も多いので、演奏する人は音の流れに柔軟についていかなければいけません。
こうした難しさがあるからこそ、プロの演奏家たちもこの曲を「腕試し」や「見せ場の曲」として取り上げることが多いんですね。
最近ではYouTubeなどでも、多くの奏者がこの曲に挑戦していて、楽器の種類を問わず“神演奏”が話題になったりしています。楽器による限界突破のパフォーマンスが人気を博している。
熊蜂の飛行(Flight of the Bumblebee) CHIHIROCK with 加藤剛志【異次元のロックアレンジ】
クラシックの超絶技巧曲として有名な「熊蜂の飛行(Flight of the Bumblebee)」には、これまでたくさんの名演が存在しますが、その中でもとびきり印象的なのが、CHIHIROCK with 加藤剛志によるロックアレンジ版です。
ビジュアルも華やかなバイオリニスト・CHIHIROCKさんが、圧巻のスピードとキレ味で弾きこなすバイオリンに、加藤剛志さんのエネルギッシュで超テクニカルなドラムが重なって、原曲のクラシカルな雰囲気が一気にロックへと進化しています。
ものすごい速さ、正確なリズム、圧倒的なパワー、そして観る人を惹きつける表現力まで――どれをとっても一級品。
このセッションは、「熊蜂の飛行」の中でも、まさに“最強クラス”と呼びたくなる仕上がりです。
カティツァ・イレーニの熊蜂の飛行|クラシック王道の極み
続いて紹介するのは、カティツァ・イレーニ(Katica Illényi)さんによる「熊蜂の飛行」です。
ピアノ伴奏ではなく、本格的なオーケストラ(ジェール・フィルハーモニー管弦楽団)をバックにした豪華なステージで、指揮はイシュトヴァーン・シッロー、ピアノはイシュトヴァーン・ブンドジクというプロフェッショナルな布陣。
場所はハンガリー・ブダペストにあるバルトーク国立コンサートホール。まさにクラシックの“本場”という舞台での演奏です。
カティツァさんのバイオリンは、超高速でありながらまったくブレがなく、音にしっかり芯があります。
オーケストラとの掛け合いも素晴らしく、ソロと全体が一体となって“熊蜂が本当にホール中を飛び回っているような臨場感”を生み出しています。
品格のあるクラシックの中に、凛としたスピード感と高揚感がしっかりあって、まさに「王道の熊蜂」といえる名演です。
高松亜衣×こへまる|ストリートピアノで魅せる超絶技巧の共演
今回ご紹介するのは、ヴァイオリニストの高松亜衣さんとピアニストのこへまるさんによる、ストリートピアノでのセッション動画です。
高松亜衣さんは、愛知県一宮市出身で、3歳からヴァイオリンを始めました。
名古屋市立菊里高等学校音楽科を経て、東京藝術大学音楽学部器楽科を卒業。
これまでに、長谷川敏子、豊田耕兒、林茂子、清水高師に師事し、数々のコンクールで受賞歴を持つ実力派ヴァイオリニストです。
YouTubeチャンネル「高松あい_violin」では、クラシックからオリジナル曲まで幅広い演奏を披露し、多くのファンを魅了しています。
こへまるさん(本名:大野紘平)は、栃木県宇都宮市出身のピアニストで、東京音楽大学を卒業。
クラシックを基盤にしながらも、ポップスの弾き語りや即興演奏を得意とし、YouTubeチャンネル「大野紘平 こへまる」では、さまざまなジャンルの演奏を公開しています。
また、2022年には「とちぎ未来大使」に就任し、地元栃木県での音楽活動にも力を入れています。
このセッションでは、ストリートピアノという開かれた空間で、二人の高い技術と音楽への情熱が融合し、観客を魅了する演奏を繰り広げています。
高松さんの華麗なボウイングとこへまるさんのダイナミックなピアノが織りなす「熊蜂の飛行」は、まさに圧巻の一言。
クラシックの名曲が、ストリートという舞台で新たな魅力を放っています。
シャンドル&アダム・ヤボルカイ兄弟|世界最速の熊蜂の飛行を体感せよ
次にご紹介するのは、ハンガリー出身の兄弟デュオ、シャンドル・ヤボルカイ(ヴァイオリン)とアダム・ヤボルカイ(チェロ)による「熊蜂の飛行」です。
彼らは、ジプシーの血を引く音楽一家に生まれ、幼少期から音楽教育を受けて育ちました。シャンドルはリスト音楽院やウィーン芸術大学で学び、数々の国際コンクールで優勝。アダムもバルトーク音楽院を経てウィーン芸術大学で研鑽を積み、多くのコンクールでの受賞歴を持ちます。2009年には、兄弟で「ウィーン・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に選出され、ヨーロッパを中心に世界各国で公演を行っています。
彼らの「熊蜂の飛行」は、ヴァイオリンとチェロのデュオで演奏され、わずか58秒で演奏を終えるという驚異的なスピードを誇ります。この超高速演奏は、非公式ながらギネス記録を超えたとも言われており、まさに彼らの代名詞となっています。
2013年9月13日、東京の浜離宮朝日ホールで撮影されたこの演奏、シャンドルのヴァイオリンとアダムのチェロが織りなす圧巻のパフォーマンスを、ぜひご覧ください。
西方正輝|チェロで魅せる超絶技巧の「熊蜂の飛行」
最後にご紹介するのは、チェリスト西方正輝さんによる「熊蜂の飛行」の演奏です。彼は1989年、千葉県船橋市出身で、10歳からチェロを始めました。東京藝術大学を卒業し、同大学院を修了。第9回ビバホールチェロコンクールで第1位を受賞するなど、多数のコンクールで上位入賞を果たしています。また、NHKスペシャル「若冲」やNHK「ファミリーヒストリー」のメインテーマのソロ演奏、高嶋ちさ子、葉加瀬太郎、梶浦由記などのツアーサポートなど、幅広い活動を展開しています。
この演奏では、チェロの低音域を活かしつつ、驚異的なスピードと正確性で「熊蜂の飛行」を奏でています。チェロ特有の深みのある音色と、彼の卓越したテクニックが融合し、聴く者を圧倒するパフォーマンスとなっています。
また、西方さんはトランペッターとしても活動しており、クラシックにとらわれない多彩な音楽表現で注目を集めています。彼のYouTubeチャンネルでは、さまざまなジャンルの演奏を楽しむことができます。
この「熊蜂の飛行」の演奏は、チェロの可能性を再認識させてくれる一曲です。ぜひ一度、彼の演奏を聴いてみてください。
熊蜂の飛行は“速さ”と“表現力”の両立がすべて
「熊蜂の飛行」は、単なる速弾き曲ではありません。
高速で正確なテクニックはもちろん、そこに“音楽としての表現”が宿ることで、聴く人の心に残る名演になります。
今回紹介した5つの演奏は、それぞれが異なる楽器・編成・アプローチでありながら、
どれも「熊蜂の飛行」という曲に新たな命を吹き込んでいました。
- ロックアレンジで熱狂を生んだ【CHIHIROCK × 加藤剛志】
- 王道クラシックの気品を感じる【カティツァ・イレーニ × ジェール・フィル】
- ストリートの開かれた空間で超絶技巧を披露した【高松亜衣 × こへまる】
- 世界最速のデュオで観客を驚かせた【ヤボルカイ兄弟】
- チェロの低音で“飛ぶ”を再定義した【西方正輝】
どれが一番というよりも、それぞれのスタイルが“最強”であり、
音楽の多様性と奥深さを改めて感じさせてくれます。
「熊蜂の飛行」は、これからもさまざまな演奏者に挑まれ、
新たな名演が生まれ続けることでしょう。
あなたの“推し熊蜂”は、どの演奏でしたか?