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鈴木保奈美と野口聡一が、あの本読みましたで語った宇宙と本の関係とは?

「えっ、野口聡一さんがゲストなの?」

テレビの番組表をスクロールしていた私は、その名前を見た瞬間、指を止めた。『あの本、読みました?』といえば、俳優・鈴木保奈美がMCを務める静かな読書番組。だが、そこに登場するのは、あの宇宙飛行士・野口聡一。かつて3度にわたり宇宙に旅立ち、地球を見下ろした男が「本」について語るというのだから、これは見逃せない。読書と宇宙。この一見交わらないように思えるふたつの世界が、どうつながるのか——私は即座にテレビの前に腰を下ろした。

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『あの本、読みました?』とは?

BSテレ東で放送中の読書番組とは

『あの本、読みました?』は、BSテレ東で放送されている読書バラエティ番組。毎週木曜夜10時から、読書好きのゲストを迎え、本にまつわる深いトークが展開される。活字離れが進む時代にあって、「本をめぐる会話」そのものがエンタメになるという稀有な番組である。

鈴木保奈美がMCを務める理由と番組の魅力

MCは俳優の鈴木保奈美。彼女の穏やかな語り口と知性が、番組全体を柔らかく包む。紹介される本は小説だけでなく、ノンフィクション、漫画、随筆と多岐にわたる。読書家としての顔を持つ鈴木氏が、時にゲストの人生と読書体験を丁寧に引き出す構成は、単なる紹介番組にとどまらない奥行きを生んでいる。

2024年の注目回|野口聡一との対談が実現

2024年1月、注目を集めたのが宇宙飛行士・野口聡一との対談回。異なる分野の2人が語り合うことで、「本」という媒介がいかに人の人生と宇宙を繋ぎうるかが見えてくる珠玉の時間だった。


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鈴木保奈美×野口聡一 対談で感じたこと

茅ヶ崎育ちの共通点と学生時代の思い出

鈴木さんも野口さんも、神奈川県茅ヶ崎市にゆかりがある。二人の会話は地元トークで自然に始まり、共通する青春の記憶がトークの温度を一気に上げた。読書番組とは思えないほどリラックスした雰囲気が印象的だった。

野口聡一が宇宙に持っていった“本”とは?

野口氏は宇宙に行く際、あえて紙の本を持参するという。理由は「壮大な無駄を楽しむため」。持って行った本には立花隆の『宇宙からの帰還』や萩尾望都のSF漫画、岡倉天心『茶の本』などがある。どれも彼にとって精神的支柱となるような作品だった。

宇宙で紙の本を読むことの「不便さ」と「ロマン」

無重力の宇宙ではページが勝手にめくれてしまうため、読書には両手が必要。加えて体の固定も求められる。「だから電子書籍の方が楽なんだけど、紙の本を持っていく自分に酔いたい」という野口氏の言葉が忘れられない。まさに文化的営為としての読書である。

立花隆『宇宙からの帰還』と、帰還後の葛藤

高校生時代に出会ったという『宇宙からの帰還』。宇宙飛行士の心理変化を描いたこの本が、野口氏にとって“宇宙”を現実のものとするきっかけになった。帰還後に感じた喪失感や「思いつき症候群」も、読書によって少しずつ言語化されていった過程が語られた。


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“本”がつなぐ宇宙と人間の精神世界

文化人としての自覚と紙の本の意味

「文化人的な俺が紙の本を持って宇宙へ」——この一言に、野口氏の“人間らしさ”が凝縮されていると感じた。技術的合理性だけで選ぶなら電子書籍が圧倒的に優れているが、彼はあえて不便な選択をする。そこに、文明の担い手としての誇りと、読書という行為の原初的なロマンがある。

野口聡一が語った「思いつき症候群」とは何か

宇宙から帰ってきた後に訪れる「次、何を目指せばいいのか分からない」という虚無感。それが「思いつき症候群」だという。これは一般社会でも多くの人が経験する。退職後、育児終了後、夢の達成後——その“空白”をどう扱うかという問いに対して、野口氏は読書と対話を通じて一つの答えを模索しているように見えた。

読書が「自分を取り戻す」装置になるという視点

番組を通じて改めて感じたのは、「読書」は自分の立ち位置を再確認するための装置になりうるということ。宇宙飛行士であれ、会社員であれ、人生には「振り返りと再定義」のタイミングが必要で、読書はその手助けをしてくれる。


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この回で紹介された本とその背景

『宇宙からの帰還』(立花隆)とはどんな本?

アポロ計画に参加した宇宙飛行士たちの帰還後の心理を丹念に追った名著。科学的業績ではなく“人の内面”に焦点を当てた構成が、読者に深い印象を残す。野口氏も10代でこの本に出会い、宇宙を“夢”から“現実”に変換する大きな契機となった。

『茶の本』(岡倉天心)や能・武術とのつながり

日本文化の美意識を宇宙に持ち込むという発想は驚きだった。無重力下での船外活動において「所作の美しさ」が役立つというのは、単なる詩的表現ではなく実践的合理性を含んでいる。茶道や能の「無駄のない動き」に宇宙空間での作業が重なるという視点は非常に興味深い。

萩尾望都作品や村上春樹『1Q84』の宇宙的な読書体験

野口氏は萩尾望都や村上春樹といった作家の作品を宇宙で読んだ経験を語った。特に『1Q84』のブック3を“宇宙宅配”で手配した話は象徴的だった。そこにあるのは、宇宙と地上をつなぐ「言葉の輸送」であり、読書は孤独のなかの連帯でもある。


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宇宙と本は、私たちの「内なる旅」をつなぐ

宇宙飛行士の言葉が教えてくれた「本を読む意味」

本は「現実逃避」の手段ではなく、むしろ現実に立ち向かうための“道具”だ。宇宙という極限状態においてなお、読書は自己を見つめる時間となる。

「文化人的な俺」に感じる現代人の誇りと葛藤

「文化人的な俺」とは、単なるナルシズムではなく、現代人の中にある“人間らしくあろうとする意志”の表れではないか。合理性だけでは生きられない我々の、どこか不器用で誇らしい本能である。

読書は“旅”であり、帰還である

野口聡一が語る「宇宙で読む」という行為は、空間的な旅にとどまらず、精神的な「帰還」そのものであった。だからこそ、本を開くという日常の行為が、私たちにとってもまた“内なる宇宙”への旅になるのだ。

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